スポーツファンの心を掴む、「WELL Cabin」の挑戦
ーどのようなプロジェクトに挑戦されているのですか?
丸谷様:弊社はもともと車の部品を製造している会社ですが、数年前から新規事業として、自社で車を仕立ててサービスを提供する取り組みを始めました。私は2年半ほど前から、その新規事業を担当しています。
現在取り組んでいる新規事業の一つが、「WELL Cabin」という先進的な車室空間を提供する車両を用いた送迎サービスです。この車両には、55インチの大画面透過型有機EL(OLED)ディスプレイをはじめ、3Dハイレゾリューション対応スピーカー、振動シート、香り空調制御といった最先端の機能を搭載しています。これらを活用することで、移動を「単なる無駄な作業」ではなく、「心を動かす体験」に変えることを目指しています。
今回のプロジェクトでは、こうした車室空間を活用し、アイスホッケーチームと連携した新たなサービスを企画しました。特に推し活を楽しまれるファンの方が多いため、試合前後の移動中に試合観戦や選手の活躍・かっこいい姿を楽しみにされる方の気持ちを高めることを目的とした映像コンテンツを制作することになりました。ファンが「ワクワクしながら試合会場へ向かい、試合後もその余韻を楽しむ」という一連の体験をデザインすることが今回のミッションです。
ー映像コンテンツの制作にあたり、どのような課題があったのでしょうか。
丸谷様:映像制作自体はこれまでも行っており、グループ会社に依頼してきました。クオリティには満足していましたが、事業を拡大していくにあたりコスト面が課題になっていました。選択肢を広げることで、クオリティ、コストともに折り合いの付く制作会社が見つかるのではと考え、他の制作会社も検討することにしました。
ちょうどそのタイミングで参加した展示会でコンシェルジュの吉岡さんに出会いました。吉岡さんから「無料で要件に合う企業をご紹介します」と提案され、とても魅力的に感じました。導入にあたっての契約等もなかったため、まずはお試し感覚でご相談させていただきました。

という一連の体験をデザインすることが今回のミッション
/ パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社 丸谷 健介様
ー実際にどのようにご相談したのですか?
丸谷様:正直、映像のコンセプトや方向性を固めるためのリサーチをしている段階でご相談したため、具体的な情報は少なかったと思います。ただ、アイスホッケーリーグのシーズン開幕時期や検証時期の兼ね合いで11月までに完成させる必要があり、逆算すると9月頃には制作に入る必要がありました。また、シーズンが開幕すると撮影が難しくなるためスピーディーに対応してくれる会社というのはマスト条件でした。
今後本数が増える可能性も考慮し、それに対応できる体制を持った会社であることも条件として挙げていました。
吉岡:具体的なコンセプトを固めている最中であるものの、スケジュールの都合で先に映像制作会社の目途を付けておきたいとご相談いただきました。ご相談いただいた時点では、今後コンセプトがどの程度固まるのかがわからなかったため、「コンセプトを映像に落とし込むことが得意で、やりたいことに寄り添ってくれる企業」と「コンセプト決めのフェーズからリードしてくれる企業」の2軸でご紹介させていただきました。
ー企画やコンセプトの明確さによって提案する会社が変わるんですね。
吉岡:はい。今回のご相談のように、コンセプトは固まっていないものの制作会社を探したい、というニーズは多いんです。今後コンセプトを固めていく、というご相談もあれば、どのようにコンセプトを固めていけば良いかわからないので提案してほしい、というご相談もあります。
プロジェクトの進めやすさという点でも制作会社のスタンスが合うかどうかは重要なので、ヒアリングの際に見極めるようにしています。
強みを活かした映像制作で感動を生む。成功を支えたパートナー選定

ー最終的には、どのような企業に決められたのですか?
丸谷様:ご紹介いただいた数社はどこも素晴らしく、それぞれ異なるアプローチを強みとしていました。ただ決め手となったのは、私たちが用意したコンセプトを具体的かつ魅力的な映像として形にしてくれる提案力と品質でした。
八木様:ファンの方へのインタビューを通して、アイスホッケーの迫力や選手の活躍に加え、「選手の普段見られない顔やギャップを知れる」というコンセプトで映像を制作することにしましたが、映像に深い知見があるわけではないのでそのコンセプトを映像に落とし込むにはどうすれば良いかがよくわからなかったです。
丸谷様:そういった要望に寄り添って、映像に落とし込むユニークなアイデアを提案してくれました。たとえば、「選手の練習中にストラックアウト形式のゲームをやってみる」という企画の映像コンテンツ。これは視聴したファンから大変好評を得ただけでなく、選手たちも楽しんで撮影に協力してくれました。映像のターゲットは、「推し活ファン」でしたので、試合の迫力を映像で伝えるだけでなく、選手のオフショットやファンに語りかけるような映像も作り込んでいただきました。
八木様:行きと帰りで異なるコンテンツを用意することで、試合前後の気持ちの変化を楽しんでいただける設計にしました。ただ、試合は勝敗があるものですので、試合の結果に関係なく楽しめる内容を盛り込むことで、ファンの満足度をさらに高める工夫も行いました。
このように、ファン目線での映像制作という点において、想像以上の提案をいただけたのが非常に大きかったです。試合に向かうワクワク感や、試合後の余韻を感じられる特別な体験を実現できたと思います。完成した映像を見たときには感動して、少し泣きそうになるほどでした。選手の魅力をこれほどまでに引き出せる映像が作れるとは思っていなかったので、そのクオリティの高さには驚きました。
ー映像の反響はいかがですか?
八木様:非常に好評です。特に反響が大きかったものの一つに、選手の食レポがあります。選手が地元の中華料理屋さんで料理を楽しむ様子を映したコンテンツが、社内外で大きな話題となりました。映像を観た社内のメンバーも「ぜひ行ってみたい!」ということで、後日実際にそのお店に訪れたり、映像を見たファンも同じようにそのお店を訪れていたようで、まるで聖地巡礼のような現象が起きました。
映像を通じてファンの方にワクワクしていただくだけでなく、推し活をもっと楽しみたいという想いが生まれ実際に試合観戦以外の行動に繋がるという成果が得られたことは、非常に大きな意義があると感じています。映像が感動を生み、それがリアルな行動につながる。この流れを作れたことは、今回のプロジェクトの成功を象徴していると思います。
ー今回のプロジェクトで、レディクルはどのようなメリットを提供できたのでしょうか。
丸谷様:第一に、レディクルに依頼したことで、プロジェクト全体が非常にスムーズに進みました。発注先を検討する際は、候補となる複数社に連絡を取って日程調整をし、打ち合わせで各社に要件をお伝えする、というプロセスを踏んでようやく提案してもらう土俵に上がりますよね。レディクルは、そのプロセスをすべて代わりに対応してくださるので、大幅に手間を削減できました。
また、第三者的な視点でのサポートも非常に有益でした。社内だけでは気づけない視点や提案をいただけたことで、より広い視野を持てるようになりました。さらに、自分たちでは曖昧になってしまう部分を、しっかりと言語化・文面化してくださるので頭の中を整理できて助かりました。

/ パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社 八木 伶依奈様
部品製造から「移ごこちデザイン」へ、未来を描く「WELL Cabin」のビジョン
ー今後のビジョンをお聞かせください。
八木様:自動車業界は「技術」や「安心・安全」が第一の業界で、人の命を預かるという責任感から、どうしても考え方が保守的になりがちです。その結果、業界全体で考えることが似通ってしまい、お客様が本当に喜ぶ価値が見えにくくなることもあります。
そうした中で、私たちは既存の枠組みにとらわれず、新しい観点を取り入れた新規事業を展開していきたいと考えています。たとえば、異業種や異なるバックグラウンドを持つ方々から新しい知見を得ることで、これまでにない視点を取り入れることが可能になります。今回のプロジェクトでも、レディクルのような外部の力を活用したことで、これまでにない独自の取り組みを進めることができました。
丸谷様:私たちの会社では「移ごこちデザイン」というコンセプトを掲げており、車での移動をより心地よくするための体験の提供に力を入れています。これまでは、車の部品やパーツをメーカーの要望に応じて作ることが主流でしたが、これからは移動そのものを特別な体験に変えることを目指しています。
その一環として取り組んだ今回のプロジェクトも、ファンが「試合前のワクワク感」や「試合後の余韻」を楽しめるように工夫し、移動時間そのものを価値ある体験に変えました。今後もこうしたアプローチを通じて、「この会社は体験をデザインできる企業だ」と思っていただけるような存在を目指してまいります。
