今後の見込み顧客の絶対数が少なくなるため
日本の市場の多くが飽和状態にあるほか、今後も人口の減少が進み、見込み客の絶対数が減ると予測されています。
このような状況では、新規顧客を獲得するための時間的・金銭的コストが上昇する一方で、既存顧客を維持するための施策のほうが高コストパフォーマンスになります。
そのため、新規顧客の獲得を目指すよりも、LTVの向上を通じて既存顧客との関係性を高め、継続利用を実現することが重要とされているのです。
2025.01.07
顧客生涯価値(LTV)は顧客ごとの総合利益を把握できる指標で、企業の収益性を測る上で欠かせません。しかし、具体的にLTVがどのような意味を持ち、どのように計算すればよいのか、疑問を持っている方も多いでしょう。
この記事では、顧客生涯価値(LTV)の基本的な意味や計算方法、関連する重要な用語について分かりやすく解説します。サブスクリプションモデルや定期購入型ビジネスが増加する現代において、LTVを正しく理解し活用することは、顧客との長期的な関係構築や収益最大化に直結します。LTVの基本を押さえたい企業担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事のポイント
1.LTVの調査・分析に必要な重要用語のまとめ
2.LTV(ライフタイムバリュー)の計算方法と具体例
3.LTV向上のために注意すべきこと
LTVとは、Life Time Valueの頭文字をとった言葉で、「顧客生涯価値」のことです。自社に対して、顧客1人につき一生のうちでどのくらいの利益を発生できるかを表せます。
LTVは、以下のような製品やサービスのマーケティングに役立ちます。
・継続的に利用されるサービス(サブスクリプション型サービスや会員制サービスなど)
・定期的に購入される製品(飲料や化粧品など日用品)
LTVは、目先の売上や利益ではなく、顧客との長期的な関係から得られる価値を評価する指標です。そのため、LTVを高めることによって、顧客との長期的な関係を構築でき、収益の安定化を図れます。
企業が成長を続け、持続可能な利益を確保するためには、LTVの重要性を理解し、向上させるための持続的な取り組みが欠かせません。ここでは、LTVを重視すべき理由についてご紹介します。
日本の市場の多くが飽和状態にあるほか、今後も人口の減少が進み、見込み客の絶対数が減ると予測されています。
このような状況では、新規顧客を獲得するための時間的・金銭的コストが上昇する一方で、既存顧客を維持するための施策のほうが高コストパフォーマンスになります。
そのため、新規顧客の獲得を目指すよりも、LTVの向上を通じて既存顧客との関係性を高め、継続利用を実現することが重要とされているのです。
近年インターネットの普及に伴い、多くの市場でサービス提供型(サブスクリプション)へとビジネス形態が変化しています。買い切り型サービスに比べ、手軽に契約できるサービスが多く、サービス間の乗り換えが容易にできます。
そのため、サブスクリプション型のサービスを提供する企業は、顧客が契約を継続できるような体制構築や施策実施が重要となり、LTVを上げることが重要視されているのです。
近年、CRM(顧客関係管理)システムなどの顧客分析ツールが充実してきたことも、LTVが重要視されることになった一因です。CRMを利用することで情報の収集や分析がしやすくなったため、LTVの測定が容易となりました。
CRMの普及などにより、LTVを正確に測定するための環境が整備されたことによって、指標としての利用が可能となり、重要視する企業が増えてきています。
LTVを正確に調査・分析するためには、関連する指標や用語を理解しておくことが重要です。ここでは、LTVの調査・分析に必要な重要用語をご紹介します。
CACは「Customer Acquisition Cost」の略で、1人の顧客を獲得するときにかかったコストを指す用語です。
新規顧客を獲得できたとしても、獲得までに広告などにコストが大きくかかっていては、利益が少なくなります。つまり、CACが高すぎる場合、LTVからCACを引いた利益が減少し、経済的に非効率となる可能性があるのです。そのため、CACを適切に管理し、LTVとバランスをとることが利益獲得において重要です。
ARPAは「Average Revenue Per Account」の略で、1顧客(1アカウント)当たりの利益の平均を示す用語です。法人向けサービスや複数ユーザーが利用するアカウントの収益を測定する際に役立ちます。
一方、ARPUは「Average Revenue Per User」の略で、1人(1ユーザー)当たりの利益の平均を指す用語です。個人向けサービスやエンドユーザー単位での収益を測定するのに適しています。
MQLとは「Marketing Qualified Lead」の略で、マーケティング活動によって取得できたリードと訳され、中でも受注に近い(=確度の高い)リードのことを指す用語です。具体的には、Webサイトで資料をダウンロードした顧客やセミナーに参加した顧客が該当します。
一方、SQLとは「Sales Qualifed Lead」の略で、日々の営業活動によって生じたリードと訳される用語です。具体的には、顧客からの問合せや追加注文など、購買意欲が明確化された顧客の行動を指します。
CPA(Cost Per Acquisition)は、新規顧客を獲得するために必要とする1件あたりのコストを示す指標です。具体的には、広告やプロモーションの費用をかけて獲得した成果(購入・会員登録など)1件に対するコストを計算します。CPAは広告キャンペーンの費用対効果を測定する際に重要で、特に「成果」の効率性を評価するために用いられます。
一方で、CAC(Customer Acquisition Cost)は1人の顧客を獲得する際にかかったコストの指標です。CPAと一見似ていますが、CACは広告費だけでなく、営業・マーケティング、人件費など顧客獲得に直接的に関連する全ての費用を含む点で異なります。
さらに、LTVを分析する際には、CPAとCACをセットでモニタリングすることが重要です。LTVがCPAやCACを上回る場合には顧客獲得が経済的に成功していると判断できますが、LTVがこれらを下回る場合には、顧客獲得コストが収益に見合わない可能性があるため、戦略の見直しが必要です。
チャーンレートとは解約率のことです。そもそもチャーンとは、顧客がサービスを解約することを指します。特に、サブスクリプション型のサービスは「導入しやすいが解約しやすい」と言われているため、チャーンレートの把握が重要です。
ユニットエコノミクスとは、顧客1人もしくはアカウント1つ当たりの採算性を表現する値のことです。具体的には、「LTV ÷ CAC」で計算でき、数値が大きいほうが事業が健全でよい状態にあると判断できます。
LTV(ライフタイムバリュー)は、加味できるコストが異なる3つの計算方法から求められます。ここでは、それぞれの計算方法と具体例をご紹介します。
顧客の年間取引額やサービスの利用年数が把握できる場合には、以下の計算式でLTVの算出が可能です。
顧客の年間取引額 × 収益率 × 顧客の継続年数
例えば、年間取引額が100万円で収益率が50%、継続して5年の取引があった場合には、以下の計算式で求められます。
100万円×0.5×5年=250万円
この計算方法は、収益率が高いビジネスや長期契約を前提としたサービスのLTVを求める際に特に有効です。
複数の顧客の購買単価・頻度と継続年数の情報から平均を求められる場合には、以下の計算式でLTVを算出できます。
平均顧客単価 × 平均購買頻度 × 平均継続期間
例えば、顧客1人当たりの平均購買単価が1,500円で購買頻度が年4回、そして平均継続期間が5年だった場合の計算式は、以下のとおりです。
1,500円×4回×5回=30,000円
この計算方法は、リテールやサブスクリプション型サービスなど顧客の購買頻度が重要な場合に適しています。
より詳細なLTVを求めたい場合には、以下の計算方法を使用します。
(平均購買単価 × 購買頻度 × 継続購買期間) - (新規獲得費用+顧客維持費用)
例えば、平均購買単価が1,500円で購買頻度が年4回、平均継続期間が5年、新規獲得費用が7,000円で顧客維持費用が1,500円なら、以下の式によってLTVが求められます。
(1,500円×4回×5年) - (7,000円+1,500円) = 21,500円
上記の式にあるように、顧客の購買行動による収益から、新規顧客の獲得にかかる費用や維持するためのコストを差し引くことによって、実際に得られる利益を算出可能です。
ここでは、LTVの向上に効果のある指標についてご紹介します。
契約期間はLTVの構成要素の一つです。契約期間が延びるほど、顧客1人当たりの収益が増加し、利益の向上に繋がります。サブスクリプションなどの定期契約の事業においては、顧客の契約期間が長いほど総売上が増加する傾向にあるため、LTVを高める上で特に重要性が高い指標です。
顧客単価とは、1回の取引で支払われる売上のことです。顧客単価を引き上げる方法は、アップセルとクロスセルの2種類が代表的です。アップセルとは高額商品の販売で利益を向上させること、一方でクロスセルは商品やサービスを追加購入してもらうことを意味します。それぞれによって、顧客1人当たりの収益が向上し、LTVの最大化が図れます。
解約率(サービス離脱率)とは、サービスを利用した顧客が再びサービスを購入することなく離脱する割合のことです。解約率を下げることでLTVが高まります。特に、サブスクリプション型の事業では、解約率を1%下げるだけでもLTVに大きな影響を与えることがあり、解約率の低下に繋がる継続的なサービス改善が重要と言えます。
顧客ロイヤリティとは、自社のサービスや商品に対する顧客の愛着や信頼のことです。顧客ロイヤリティが高まれば、リピート率が向上し、顧客単価の向上も見込めます。顧客ロイヤリティの向上には、充実したカスタマーサポートの提供や顧客限定のお得なキャンペーンの実施が有効です。
ここでは、LTVを高めるためのポイントについてご紹介します。
LTVの向上には、購入頻度を上げるための工夫が必要です。例えば、「メルマガを通じて購買後のフォローを行う」「直接電話に繋がるサポート体制を提供する」などにより、顧客とのコンタクトを増やし、顧客ロイヤリティの向上を目指すことが有効です。顧客と継続的かつ緩やかなコンタクトを保ち続けることによって、購買行動に繋がると期待できます。
なお、「顧客満足度」と「ロイヤリティ」はよく混同される用語ですが、顧客満足度は顧客が製品やサービスに対して感じる満足度のことを指し、ブランドへの愛着であるロイヤリティとは異なります。顧客満足度を土台に、ロイヤリティを育む施策を組み合わせることが、購入頻度を持続的に高める鍵となります。
LTVを高めるためには、価値を追加する方向で客単価を上げることも重要なポイントです。
例えば、まとめ売りにして商品の価格を下げたり、顧客ニーズを反映させてサービスの質を改善したりなど、従来にはなかった価値を追加することによって、客単価を上げ、LTVの向上を目指します。
既存の商品を単に値上げするだけでは、客は離れていくため注意が必要です。近年の物価高の影響を受け、値上げが必要な場合にも、LTVを維持・向上させるためには、何かしらの価値を付ける必要があります。
LTVを高めるには、顧客満足度の向上が欠かせません。顧客満足度を向上させるには、商品やサービスの品質を向上させるだけでなく、顧客が接するあらゆる場面での体験を充実させることが求められます。
例えば、個々の顧客に合わせたパーソナライズされた商品提案や、問題発生時の迅速で丁寧な対応を行うことで、顧客に「選ばれる体験」を提供できます。顧客との接点を増やすだけでなく、その接点が有意義で心地よいものであることを意識しましょう。
顧客満足度が高まれば、自然と顧客のロイヤリティも形成され、長期的な関係性を築くことができます。その結果、LTVを大幅に向上させることが可能になります。
LTVは顧客の継続期間が長く、利用回数が多いほど高くなるため、継続利用を促すことも重要です。客単価と購入頻度が高い顧客に長く利用してもらう戦略を取り、継続利用へと繋げましょう。
顧客の離脱を防ぐための施策も重要です。例えば、お得意様限定の商品・セールの提供や、メルマガやSNSを通じた定期的なコミュニケーションが有効です。
継続利用を促進する施策により、顧客との関係を深め、収益の安定化に繋げられます。
LTV向上を目指す上で、利益を高めるためには製品の原価を抑えることも戦略の1つです。
商品・サービスを提供するための仕入れや開発、製造コストを抑えることができれば、その分購買単価に対する利益率が高くなります。また、元の平均購買単価を変えずに商品を値下げできれば、商品のコストパフォーマンスが高くなるため、新規顧客の増加を狙えます。
ただし、原価削減を行う際には、顧客が求める品質を維持しつつコストを削減しなければ、提供商品の質低下に伴い顧客の離脱を促すため注意が必要です。
ここでは、LTV向上のために注意すべきことをご紹介します。
LTVを高めるために行った施策にも関わらず、逆効果となり、既存顧客が離れていく可能性もあります。特に、以下の施策を実施する際には、顧客離れを促進する恐れがあるため注意が必要です。
・商品の値上げ:既存の顧客が納得できる値上げでないケース
・サービス内容の変更:サービスやプランのアップデートが顧客ニーズと不一致なケース
・過度なコミュニケーション:過剰に接触するケース
上記のような逆効果になる場合には、顧客ニーズの分析とコミュニケーションの不足が原因として考えられます。
そのため、特に施策や提供商品やサービスを変更する際には、顧客のニーズを優先し、顧客からのフィードバックを反映させた施策の採用が必要です。
LTVの向上を目的とする場合には数字の上下に注目しがちになりますが、表面的な数字だけで判断しないように注意が必要です。
例えば、サブスクリプション型のサービスでLTVが高い場合には、サービス内容や特典が顧客にとって魅力的などのさまざまな理由が挙げられます。また、サービス内容に関係なく、単に退会・解約の手続きが分かりづらく面倒で、続けてしまっていることが理由である場合も考えられます。
そのため、LTVの数値と理由の関係性については、決めつけるのではなく、多角的な視点で評価することが重要です。LTVの向上に直結している理由や逆に悪影響を与えている原因が明確になることで、LTVの向上により高い効果のある施策を検討できます。
LTVの最大化は、長期的なスパンで取り組みを継続することが重要です。LTVの向上は1度の施策で効果が出ることを期待するのではなく、長期的に試行錯誤する必要があります。
特に、LTV向上の施策として顧客ロイヤリティを高める場合には、顧客の購買行動に反映されるまでに時間がかかる傾向にあります。
LTVを高めるためには、定期的に施策の効果を検証し、顧客データに基づいて改善を繰り返す姿勢が重要です。
LTVは経営の安定化を目指す上で重要です。LTVの向上には、既存顧客への配慮やデータ分析などを行う必要があります。LTVの最大化を目指す施策は、長期的なスパンで計画し、定期的に効果の検証と修正を繰り返す必要があるため、自社負担が大きくなります。また、根本としてLTVを高めるためには、どのような手法をとるべきか判断が難しい場合も少なくありません。
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