顧客セグメントとは|マーケティングに活かすポイントや分類方法、具体例を徹底解説
2025.01.15
顧客セグメントとは顧客を詳細に分類し、ニーズを分析する際に役立つマーケティング手法です。しかし、「具体的にどのような方法なのか」「どのように活用すれば良いのか」などと疑問をお持ちの方も多いでしょう。
そこで本記事では、顧客セグメントの概念やメリットなど基本的な情報とともに、作成時のポイントや分類方法、企業の活用例を徹底解説します。自社のマーケティング活動をさらに強化したいと考えている企業担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事のポイント
1.顧客セグメントを作成する方法・ポイント
2.顧客セグメントの活用事例2選
3.顧客セグメントと合わせて理解すべき「STP分析」
顧客セグメントとは、対象となる顧客を「傾向」ごとに分類したグループのことを指します。顧客セグメントにおける傾向とは、以下を指します。
・デモグラフィック要素:性別や年齢層、居住地域など人口統計学に基づく属性
・ビヘイビオラル要素:購入履歴やWebサイトの閲覧行動、趣味・嗜好などの行動
上記をもとに分類することによって、顧客のニーズを深く理解でき、グループごとに適したマーケティング施策の立案が可能となります。顧客ごとに適したマーケティングが成功できれば、顧客満足度の向上が見込めるだけでなく、継続的にフォローアップしていくことによって長期的な顧客ロイヤリティの構築にも繋がります。
マーケティング施策の効率化が可能となる
顧客セグメントを活用することなく全ての顧客を対象にすると、広告コンテンツが的外れなものになってしまい、商品・サービスを本当に必要としている顧客に興味を持たれない可能性があります。
ターゲットとコンテンツの不一致が生じてしまうと、期待する利益を大きく下回り、費用対効果が低下してしまいます。
一方、顧客セグメントを徹底し、選定したターゲットに寄り添った広告配信をすれば、無作為かつ大量に広告を配信するよりも、広告制作のコストダウンや売上拡大に繋がる可能性を高めることが可能です。顧客セグメントの活用により、効果的なマーケティング施策を実施でき、費用対効果の向上が期待できます。
解約率低下につながる
顧客セグメントを活用すると、自社商品やサービスを解約しやすい顧客グループの特定が可能です。解約の傾向が見られるグループを抽出し、傾向を分析すれば、自社商品やサービスにおける解約の原因を把握できます。
解約の原因が明確になれば、利用を促す特典やキャンペーンの提供やサポート体制の強化など、離脱する顧客に対して具体的な対応策を講じることが可能です。
このような対応により、顧客との信頼関係をより強化でき、自社商品やサービスにおける解約率の低下に繋がります。
顧客満足度が向上につながる
顧客セグメントによって各グループのニーズや特性を深く理解し分析することによって、ユーザーが真に求めるサービスやキャンペーンの展開が可能です。例えば、若年層向けには最新トレンドを意識したデザインの商品を提供し、高齢層向けには利便性を重視したサービスの展開が考えられます。
また、顧客一人ひとりに最適化されたパーソナライズな体験の提供によって、「自分のためのサービス」と感じてもらいやすくなり、顧客満足度やロイヤリティの向上が期待できます。
STP分析とは、「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の頭文字をとった言葉で、マーケティング戦略を立案する際に欠かせないフレームワークです。それぞれは以下のような意味を持ちます。
種類
|
意味
|
セグメンテーション
|
傾向ごとに顧客セグメントに分類すること
|
ターゲティング
|
細分化された顧客グループの中から、自社の商品やサービスに合う領域を決定すること
|
ポジショニング
|
自社がどの立場でビジネスを行うのかを決定すること
|
これらを通じて、市場を細分化し、ターゲット顧客を明確にし、競合との差別化を図る戦略の立案が可能です。以下で詳しく見ていきましょう。
1.S「セグメンテーション」
セグメンテーションとは、性別や年齢層、居住地域や行動など顧客が持つ傾向ごとに顧客を分類し、市場を細分化することです。具体的には、以下のような基準に基づきます。
・人口動態変数(年齢、性別、職業、収入など)
・地理的変数(地域、気候、人口密度など)
・心理的変数(価値観、ライフスタイル、趣味嗜好など)
・行動変数(購買履歴、使用頻度、購入タイミングなど)
上記の基準に基づきセグメンテーションを適切に行うことによって、顧客のニーズを明確に把握でき、的確なターゲティングやポジショニングが可能になります。
2.T「ターゲティング」
ターゲティングとは、セグメンテーションによって細分化された顧客グループの中から、自社の商品やサービスに合う領域を決定する行為のことです。ターゲティングでは以下のような基準に基づいて行われます。
・市場規模:顧客の数は適当か
・競合環境:自社の商品やサービスの立ち位置はどこか
・測定可能性:アプローチの効果検証が可能か
・成長性:市場セグメントに十分な将来性があるか
・緊急性:優先すべきターゲットか
・到達可能性:アプローチによって自社商品が届く可能性はあるか
上記の基準に基づき適切なターゲティングを行うことによって、リソースを効率的に活用でき、高い成果を上げられます。
3.P「ポジショニング」
ポジショニングとは、セグメンテーションとターゲティングにより売りたい商品と市場を決定した後、自社がどの立場でビジネスを行うのかを決定することです。
例えば、オンラインのビジネスマッチングサービスの場合には、「AI(人工知能)によるマッチング機能を提供」などによって、オフラインのサービスにはない価値を顧客に訴求でき、競合優位性を高められます。
この例のように、自社商品やサービスの優位性を高めるためにも、差別化されたポジションに立てるよう意識することが必要です。
事例1:カーブス「細かいセグメント設定で的確にニーズを捉えることに成功」
フィットネスクラブの「カーブス」は、従来のフィットネス市場で主流であった男性向けクラブに対して、女性にセグメントを設定しました。
さらに、女性の中でも若者世代ではなく、「体力低下に悩む50代女性」に絞ったことも大きな特徴です。
その結果、30分間の比較的負荷の少ないトレーニングメニューを提供するなど、的確にターゲットのニーズを捉えることに成功しました。
事例2:ユニクロ「シンプルな要素に絞り込んだセグメンテーションで成功」
大手アパレルブランドの「ユニクロ」は、当時細かくセグメントを分類していた競合他社とは違い、シンプルな要素のみでセグメンテーションを行いました。具体的には、女性や20代といった詳細な人口統計学的要素に基づくのではなく、「カジュアル / フォーマル」「トレンド / ベーシック」といった提供商品の要素でセグメントを絞りました。
結果として、ユニクロの強みでもある、商品企画から生産、販売までをワンストップで提供する「SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)」を活かすことができ、現在の成功を収めています。
セグメントに分ける方法を決める
顧客セグメントを作成する際には、まず顧客の属性を設定し、セグメントに分類できるようにする必要があります。基本的には、以下表の4要素に基づいて設定することによって分類できます。
要素
|
内容
|
人口動態変数
|
年齢、性別、家族構成など
|
地理的変数
|
地域の人口、人口密度、気候など
|
心理的変数
|
ライフスタイルや価値観など
|
行動変数
|
商品を購入した日時や商品の金額など
|
上記をもとに自社商品やサービスに相応しいかどうかを確認しながら、柔軟にカスタマイズし、セグメントの分け方を最適化することがポイントです。例えば、若年層向けのサービスを提供する場合には、心理的変数として「トレンドへの敏感さ」を追加するなど、自社のターゲット顧客に合った基準を設けると、より精度の高いセグメントが作成できます。
顧客セグメントの分け方を柔軟に作成することによって、マーケティング施策の精度を高め、顧客満足度などの成果を得ることが可能です。
項目に沿って顧客セグメントを作成する
顧客セグメントを作成する際には、設定したセグメントに沿って顧客セグメントを作成します。しかし、項目によっては、既存のデータのみでは十分な情報が得られない場合もあります。そのような場合には、以下の方法を活用して補足情報の収集が必要です。
・アンケート調査:特定の質問を設けることによって、心理的変数や行動変数に関する詳細なデータを収集でき、顧客の趣味嗜好や価値観を把握できる
・既存顧客へのヒアリング:顧客との直接的なコミュニケーションを通じて、ニーズや課題を深掘りできる
・SNS投稿の分析:顧客が投稿するSNSの内容や反応から趣味や行動パターンの把握や、自社商品やサービスに対する意見を収集できる
これらの手法を組み合わせることによって、単なるデータだけでなく、顧客の行動や心理を深く理解した顧客セグメントの作成が可能です。
顧客セグメントが適切か検証する
作成した顧客セグメントは、適切であるかどうか検証が必要です。検証する際には「Rank(優先順位)・Realistic(規模の有効性)・Reach(到達可能性)・Response(測定可能性)」の4つの要素から構成される「4R」と呼ばれる評価指標を活用します。
これらの4つの項目を満たしている場合、顧客セグメントが効果的に機能していると判断できます。一方で、一つでも不十分な場合には、再度セグメントの見直しを行い、修正が必要です。
4Rに基づきセグメントの有効性を繰り返し検証することによって、より精度の高いセグメントを維持でき、マーケティング戦略の成功確率を高められます。
以下では、4Rを詳細にご紹介します。
顧客セグメントの評価に使う「4R」
顧客セグメントを評価する際に活用される「4R」とは、以下の4つの指標を指します。
・Rank(優先順位):顧客セグメントに優先順位をつけられるかどうか
・Realistic(規模の有効性):十分な売上が見込める市場規模かどうか
・Reach(到達可能性):ユーザーに商品や広告を届けられるかどうか
・Response(測定可能性):顧客からの反応の測定やプロモーションの影響の測定が可能かどうか
この4Rに対して、さらに2つのRを加えた以下の「6R」を活用することによって、より詳細にセグメントを評価できます。追加の評価指標は、以下のとおりです。
・Rival(競合状況):すでに競合が占有している市場でないかどうか
・Rate / Rate of Growth(成長性):将来的にビジネスが成長する可能性があるかどうか
6Rによって将来的な有効性も評価でき、より確実なマーケティング戦略を立案できます。
新商品の開発する際は特に注意が必要
新商品開発時は特に、セグメントの規模を十分に把握しないまま進めると、利益獲得においてリスクを抱えるため注意が必要です。特に、セグメントの人数が想定よりも少なすぎた場合、十分な利益が見込めません。
そのため、新商品の開発に着手する前には、以下のポイントを確認する必要があります。
・セグメント規模の確認:対象セグメントの顧客数を確認
・収益予測の試算:セグメント内の顧客が実際に商品購入に至る確率を試算し、収益性を確認
・リスク評価:セグメント規模の見込みが外れた場合のリスクをシミュレーションし、適切な対策を検討
マーケティング施策を進める前には、上記のポイントをもとに事前調査を徹底することが重要です。
顧客セグメント作成後はモニタリングを継続する
顧客セグメントは、市場の変化やトレンド、季節要因など複数の要因によって時間の経過とともに変化します。そのため、作成後は継続してモニタリングを行い、調整する必要があります。
モニタリングを行う際のポイントは、以下のとおりです。
・購買行動の変化:顧客の購入頻度や商品カテゴリの移り変わりを把握
・新しいトレンドや市場の変化:新しい需要やトレンドが現れた場合、既存のセグメントを再評価
・施策の効果測定:セグメントに基づいて行った施策が期待通りの成果を出しているかを検証
上記のポイントをもとに適切に改善することによって、顧客セグメントを常に最新の状態に保つことができ、セグメントを取り巻くさまざまな変化に対応できます。
顧客データの定期的な整理と更新を行う
顧客セグメントを時間の経過に合わせて最適化するためには、顧客データを定期的に更新する必要があります。時間の経過に伴い、顧客情報が古くなったり、セグメントに合わなくなったりする場合があるからです。
顧客データを整理・更新する際のポイントは、以下が挙げられます。
・データのクリーニング:重複データや誤ったデータを除去し、正確性を向上させる
・新規データの追加:新しい顧客情報や行動データを継続的に収集・反映させる
・セグメント条件の再設定:更新されたデータをもとに、既存のセグメント条件が適切かどうかを見直す
上記のポイントをもとに、顧客データを常に最新の状態にすることによって、マーケティング施策の精度が向上し、より高い効果を得られます。
顧客セグメントは、新規事業だけではなく既存事業を伸ばす上で必須のマーケティング手法です。しかし、より正確なセグメントを設定するためには、STP分析にある人口動態変数や地理的変数など多数の項目へ分類する必要があり、大きな手間がかかります。
また、定期的なデータの整理やモニタリングも必要となり、マーケティングやデータ分析に関する高度な専門知識も必要です。
自社で顧客セグメント設定の十分な知見がない場合や、そもそも事業成長のための解決手法が顧客セグメントのみで良いのかを判断する場合など、自社に合った解決策を知りたいときには、「Ready Crew(レディクル)」の活用がおすすめです。
Ready Crew(レディクル)では集客・売上向上など、漠然とした課題ベースから相談でき、自社に合った適切な会社を見つけられます。無料で相談が可能なので、まずはお問い合わせください。