「計画も予算も不透明」な状態からスタート
――北原様の現在の役割と、当時の近江鉄道様が直面していた課題について教えてください。
近江鉄道 北原様(以下、北原様): 私は管理部の広報課に所属しています。役割としては、対外的なメディア発信やニュースリリースの発信、社内報などの社内向けコンテンツ制作、そして今回のようなブランディングプロジェクトまで多岐にわたっています。
当社は事業部制を採用しており、鉄道部、自動車部などに分かれています。通常の案件は各事業部が企画・実行しますが、今回の「ブランドプロミス」開発プロジェクトは会社全体に関わるため、管理部が中心となって推進することになりました。
――「ブランドプロミス」開発プロジェクトは、どのような経緯でスタートしたのですか?
北原様: 最初は「130周年を迎えるにあたり、キャッチコピーを作りたい」という構想のみで、具体的な内容は何も決まっていませんでした。予算規模や相談先も含め、手探り状態からのスタートでした。
その中で最も苦戦したのが、「パートナー企業の探し方」でした。地元の滋賀県で探すなら、お付き合いのある企業様に声をかけるのが通常です。しかし、ブランディングという専門領域において、地域内に適した企業様が存在するのかは判断がつきませんでした。
首都圏や関西圏には専門的な企業様がたくさんいらっしゃる認識はあったものの、自社に合うパートナーをどのように見つけ出せばいいのか分からず、頭を抱えていました。
2年間対話を重ねて形になったブランディング
──そうした課題を抱える中で、レディクルにご相談いただいたのですよね。どのような経緯で出会われたのですか?
レディクル 宮田(以下、宮田): はじめてお電話させていただいたのは2024年7月頃です。当時、前任の方がご異動されたタイミングで北原様に対応していただきました。とても丁寧にお話してくださったのを覚えています。あれから2年が経ち、ここまでのプロジェクトに発展したことは感無量です。
北原様:最初は、「SNS運用をサポートしてくれる企業がないか」という相談でしたね。その際に「実は、130周年のブランディング構想のお話も出ている」とお伝えしたことで、具体的なプロジェクトとして進行していきました。
宮田:2年間にわたり、北原様に伴走させていただき、大切な節目の制作物が形になったことを心から嬉しく思っております。
7社との比較で見えた、それぞれの強み
――実際にパートナー企業の決定に至ったプロセスについて教えてください。
北原様: レディクルに相談する前は、基本的に地元の企業様かグループ会社の紹介を中心に企業様を探していました。しかし今回は「周年」「鉄道事業」を軸に、新しい視点を提供してくれる企業様を探す必要がありました。
宮田: レディクルのデータベースからご条件に適合する企業様を確認し、その中から7社に絞ってご紹介させていただきました。
一口にブランディングと言っても、戦略構築が得意な企業様もいらっしゃれば、ロゴやコピーをデザインに落とし込むことに特化した企業様もいらっしゃいます。それぞれ強みが異なる企業様を複数社ご紹介することで、北原様が比較検討できるよう準備いたしました。
北原様: ご紹介いただいた7社すべての提案を伺いました。同じ要件をお伝えしても、企業様によって提案の仕方や着眼点が異なるんですよね。提案内容の比較はもちろん、 「この企業様とは価値観が合いそうだ」という言語化しにくい相性も含めて検討を進めることができました。
従業員20名が携わった横断プロジェクト
――パートナー企業の最終的な決め手は何だったのでしょうか?
北原様: 決め手は主に4つあります。
まず1つ目は「成長戦略との整合性」です。当社の経営戦略をお伝えした上で、しっかり整合性のあったご提案になっているかどうかがひとつ。
2つ目が、「ビジュアルの提案力」です。今回はロゴも作ることになっていたので、過去の事例を見せていただきながら、デザインのクオリティや方向性を確認いたしました。
3つ目が、「社内浸透プランの具体性」です。今回、キャッチコピーを作るにあたって、「従業員全員が携わる形で作っていこう」という想いがありました。その点を先方にお伝えした上で、「プロジェクトチームを構築しながら進める」という要望も、具体的にプランへ落とし込んでくださいました。
そして最後に、「同業・同規模の実績」です。交通・鉄道事業やインフラ、地域創生といった事例を見せていただき、選定の参考にさせていただきました。
――実際のプロジェクトはどのように進みましたか?
北原様: 本格的に動き出したのは2026年1月からです。まず1月に社長をはじめとする経営陣へのインタビューを実施し、続く2月・3月には従業員が参加するディスカッションを1回ずつ開催しました。
各事業部から数名ずつ集まった20名ほどの横断チームを結成し、広報課とパートナー企業様が中心となって進めていきました。
ディスカッションでは、パートナー企業様からいただいた複数のロゴやコピー案をベースに、従業員のアイデアも掛け合わせながらブラッシュアップを重ねていきました。非常にタイトなスケジュールでしたが、全社の協力のおかげで無事に形にすることができ、本当に安心しました。
「鼓動、つくる、つなぐ」のコピーに込められた想い
――完成したキャッチコピー「鼓動、つくる、つなぐ」に込められた想いを教えてください。
北原様: このコピーには、近江鉄道が目指す未来の姿が込められています。
今回、プロジェクトの中で「未来創造マップ」というものを作成しました。そこでは、学習塾やサービスエリアなど、130年間の歴史の中で展開してきた事業を振り返りつつ、アプリの開発や電車での結婚式、電車のイルミネーションなど未来の賑わいづくりに向けたアイデアを散りばめています。
自社だけで完結するのではなく、地域や交通インフラを通じて人々をつなぎ、波紋のように滋賀県全域へ活気を広げていきたいという想いを表現しました。プロジェクトに参加した従業員全員が制作プロセスに携わることで、このキャッチコピーが「自分ごと」として浸透し、プロジェクトに参加した従業員からは「このプロジェクトに携われて本当によかった」という声が多く寄せられました。
創立130周年記念出発式で新ロゴやビジュアルを公開
――お披露目となった創立130周年記念出発式での発表の様子はいかがでしたか?
北原様: 彦根駅のホームにて、滋賀県知事や東近江市長らもお招きした出発式を開催しました。特に130周年記念列車が出発する瞬間は非常に感動的でした。「2年間の準備がようやく形になったんだな」という実感がありました。
併せて制作していたプロモーションビデオも、琵琶湖をバックに撮影し、従業員だけではなく近江地域の事業者様や住民の皆様にも出演していただきました。「多様な人が関わる企業」というイメージを大切に制作していたので、その想いを映像に表現できたと感じています。
今後はこのキャッチコピーとロゴを、ポスターやパンフレット、駅舎や車両内の掲示など、あらゆる場所で活用していく予定です。
ただ、ここからが本当のスタートだと思っています。130周年という大きな節目を迎えましたが、今後は全従業員がこのキャッチコピーに込められた想いや意味を自分の言葉で語れるよう、まずは社内への浸透を丁寧に進めてまいります。
AI時代だからこそ、「人と人」の関係性を大切に
――最後に、AI技術が急速に進む中での「人による推奨」の価値についてお聞かせください。
北原様: 日々の業務でAIは欠かせない存在になっています。だからこそ、人とのつながりや“顔が見える関係”の価値は、これまで以上に高まっていると感じます。どれだけ技術やツールが進化しても、最終的な決め手になるのは「人と人との信頼関係」です。その関係性と温かさを大切にしながら、これからも一緒に歩んでいけるパートナー企業様を選んでいきたいですね。
宮田: 今回のプロジェクトで北原様とご一緒でき、本当に光栄でした。組織全体の一体感が生まれる過程を見守ることができたことは、私にとっても非常に感慨深く、大きな財産です。
北原様: 他社の営業さんだと、一度の商談で連絡が途切れてしまうケースもありますが、宮田さんは定期的に電話をくださり、「最近どうですか」と進捗を細やかに確認してくださったんです。本当にスムーズにセッティングしていただき、おかげさまで安心して任せることができました。
そして、このキャッチコピーとロゴが完成して、県知事や市長にもご評価いただいて、従業員みんなでこの日を迎えることができたことに、心から感謝しています。
宮田: 東京と滋賀という距離を超え、こうして対面でお会いできたことを大変嬉しく思います。本当にありがとうございました!






