システム開発にかかる期間の目安|細かな工程を紹介!
2021.06.29
新たにシステムを導入したいと考える企業にとって、「開発にはどれくらいの期間がかかるのか?」は非常に重要な検討ポイントです。 外部の開発会社にアウトソーシングする場合、目安を知っておくだけでも、プロジェクト全体のスケジュール設計がぐっと立てやすくなります。
本記事では、システム開発にかかる期間の目安をわかりやすく解説するとともに、開発手法の違いや工程ごとの概要も紹介していきます。
スムーズなシステム導入に向けて、あらかじめ必要な知識をしっかり押さえておきましょう。
システム開発にかかる期間は、開発規模・仕様の複雑さ・発注者側の意思決定スピードなどによって大きく変動します。 一概に「何ヶ月あれば完成する」と断言することは難しいですが、あらかじめ目安を把握しておくことで、実現可能なスケジュール設計がしやすくなります。
特に重要なのが「要件定義フェーズ」で、ここでは発注側の意思決定がプロジェクト全体の進行を左右することになります。要件がなかなかまとまらない場合、当然ながら次の設計・開発工程に移れず、スケジュール全体が遅延する要因となります。
また、システムの最終的な品質を左右する「運用テスト」でも、開発側だけでなく発注者側の確認や承認作業が発生します。ユーザーインターフェースや仕様に問題がないか、十分に検証を行いながら納品へと進む必要があります。
一般的な開発期間の目安
| システムの規模 |
想定される期間 |
特徴 |
| 小規模開発 |
約1〜2ヶ月 |
単機能または社内向けツールなど比較的シンプルな構成 |
| 中規模開発 |
約3〜4ヶ月 |
複数機能を含み、外部連携なども発生する |
| 大規模開発 |
半年以上 |
顧客向けのサービスや業務基幹システムなど |
もちろん、上記はあくまでも一般的な目安であり、プロジェクトによってはこれより短期・長期になる場合もあります。
開発をスムーズに進めるためには、発注者側の積極的な参加・明確な意思決定・迅速なレスポンスが不可欠です。 どのフェーズでどんな確認が必要になるのか、あらかじめ把握しておくことがプロジェクト成功の鍵を握ります。
システム開発のスケジュールに大きな影響を与える要素の一つが「開発手法」です。現在、代表的な開発手法としては「ウォーターフォールモデル」と「アジャイル開発モデル」の2つがあります。
それぞれの特性を理解することで、プロジェクトの目的や規模に合った適切な方法を選ぶことが可能になります。
ウォーターフォールモデルウォーターフォールモデル:計画通りに進めたいシステム開発に最適
ウォーターフォールモデルは、上流から下流へ“滝のように”順番に作業を進めることからその名が付いた、システム開発における代表的な手法です。要件定義→設計→開発→テスト→納品と、各工程を一つひとつ完了させながら次に進むのが特徴です。
特徴とメリット
この手法の最大の強みは、全体のスケジュールが明確になりやすく、進捗管理がしやすいこと。事前に仕様や要件が固まっているプロジェクトであれば、各工程で発生する作業内容が明確になるため、開発側・発注側双方にとって無駄が少なくなります。大規模なプロジェクトや、納期・予算が厳格に決まっている案件で特に力を発揮します。
また、各工程の完了時には明確なチェックポイントが設けられるため、品質の管理もしやすい点も魅力の一つです。プロジェクトメンバーが多い場合でも、役割分担がしやすく作業がスムーズに進む傾向にあります。
注意点とデメリット
一方で、ウォーターフォールモデルには柔軟性の低さというデメリットもあります。仕様変更が発生した場合、前工程までさかのぼって修正が必要になるため、大幅なスケジュールの遅延や追加コストが発生する可能性があります。
たとえば、プログラミングフェーズで重大な要件漏れが発覚した場合でも、それを修正するには設計フェーズから見直さなければならず、対応には時間とコストがかかるのが現実です。
適したプロジェクト例
-
要件が初期段階で固まっている業務システム
-
金融・医療など高い正確性が求められるシステム
-
社内で合意を得た設計仕様が変更されにくい案件
アジャイル開発モデル
アジャイル開発モデルは、「機敏」「素早い」という意味の“Agile”を由来とし、変化に柔軟に対応できる開発手法として2000年代から注目を集めています。短期間で繰り返し開発・検証を行いながら進めるスタイルで、スピーディーかつ柔軟性の高いシステム開発が可能です。
スプリントとイテレーションのサイクル
アジャイルではまず、大まかな仕様を定めたうえで、1〜4週間ほどの短い期間で開発できる単位(スプリント)にプロジェクトを分割します。
各スプリントごとに「要件定義→設計→開発→テスト」までを完結させるのが特徴で、この開発の繰り返しサイクルをイテレーションと呼びます。
この反復的な工程を積み重ねていくことで、段階的に完成度の高いシステムへと仕上げていくのが、アジャイル開発の基本的な仕組みです。
柔軟な変更対応と高い品質
このモデルでは、依頼側と開発側の密なコミュニケーションが非常に重視されます。スプリントごとに要望やフィードバックを受けながら改善を繰り返すため、変化に強く、仕様変更にも柔軟に対応可能です。
また、小さな単位で改善を重ねていくことにより、機能面やUIの質も高まりやすく、最終的に満足度の高いシステムへと仕上がりやすくなります。
アジャイルの注意点
ただしアジャイル開発には、スケジュールが読みづらいというデメリットもあります。明確なゴール設定や納期管理が曖昧なままだと、プロジェクトが長期化してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
とはいえ、要件がまだ固まり切っていない段階の案件や、スピード重視・柔軟性重視の開発には最適な選択肢です。予算や納期にある程度の調整余地がある場合には、より柔軟で高品質な開発を実現できます。
システム開発をスムーズに進めるためには、全体の工程を事前に理解し、各段階で必要な準備や対応を把握しておくことが重要です。工程を把握することで、発注側がいつどのような判断を求められるかが明確になり、納期管理やプロジェクトの進行にも大きく役立ちます。
ここからは、システム開発の主要な工程(要件定義、設計、プログラミング、テスト・納品)について、各フェーズでの目的や所要期間の目安、発注側が担うべき役割などを詳しく解説していきます。
要件定義
要件定義は、システム開発における最初の重要なステップであり、約2週間〜1ヶ月程度を要することが一般的です。この段階では、開発の目的や背景、業務課題、システムで実現したいことを明確化し、「どのようなシステムをつくるのか」という全体像を定義します。
要件定義で定める内容は、大きく分けて以下の2つです。
また、要件定義では以下のような調整も行われます。
-
開発スケジュール(納期)
-
チーム体制と担当者の明確化
-
納品方法(成果物の形式、テスト環境など)
この工程は発注側の意思決定が特に多く求められる重要フェーズです。発注側と開発側の認識がズレたまま進行してしまうと、後の設計や実装で大幅な修正が発生し、スケジュール遅延やコスト増加の要因になります。
そのため、要件定義フェーズではできる限り丁寧なヒアリングと情報整理を行い、双方の合意のもとで仕様を確定させることが、成功のカギとなります。
設計
設計フェーズは、システムの構造や見た目、動作の仕組みを具体化するステップであり、開発の中核を担う重要な工程です。このフェーズは主に以下の3つに分かれ、それぞれに約2週間〜1ヶ月程度の期間がかかるのが一般的です。
1. 外部設計(概要設計)
まず行われるのが外部設計で、ここではユーザー視点でのシステム仕様を設計します。具体的には、
この段階では、システムを利用するユーザーにとっての使いやすさ・見やすさが重視されます。依頼者の要望を反映させやすいタイミングなので、「どんなデザインがよいか」「業務上どんな流れが理想か」などを開発側にしっかり伝えることがポイントです。
2. 内部設計(詳細設計)
外部設計の次に行うのが内部設計です。ここでは、開発者目線でのロジックやシステムの裏側の動作を細かく決めていきます。
-
データベース設計
-
各機能の処理手順
-
モジュールやクラスの構造 など
この工程に入ると、発注側からの直接的な関与は減り、開発チームが中心となって進行します。
3. プログラム設計
内部設計の一部として行われるのがプログラム設計で、各機能を構成するプログラム単位で、どのような処理をどう実装するかを定義します。ここでの設計がその後のプログラミングの品質や効率に大きく影響するため、極めて重要なステップです。
設計フェーズは、開発全体の設計図を描く作業ともいえる工程であり、ここでの精度がその後の開発の成否を分けると言っても過言ではありません。設計の段階でしっかりと仕様を固めておくことで、開発後の手戻りを最小限に抑えることができます。
プログラミング
プログラミング工程は、システム開発における実装フェーズに該当し、設計フェーズで決定した仕様に基づき、実際にコードを書いて機能を具現化していく段階です。期間の目安としては、約1〜2ヶ月程度が一般的です。
実際の作業内容
この工程では、以下のような作業が行われます。
-
設計書(詳細設計書・プログラム設計書)に基づいたコードの作成
-
使用するプログラミング言語に応じた各種ロジックの実装
-
API連携や外部システムとの通信処理の実装
-
データベースとの接続処理・データの操作(CRUD)
これらは基本的に開発チーム(プログラマー)が中心となって対応する工程であり、発注側の関与は限定的です。
この工程で重要なポイント
-
設計の正確さがコード品質に直結するため、前工程の完成度が非常に重要です。
-
コーディングルールやフレームワークの選定によって、生産性や保守性が大きく左右されます。
-
チーム開発では、Gitなどのバージョン管理ツールを活用し、複数人が効率よく共同作業を進める体制が求められます。
プログラミング完了後は次の工程へ
コーディングが完了すると、次はテスト工程(単体テストや結合テストなど)へ進み、作成したプログラムの動作確認を行います。この工程までにバグや不具合ができるだけ少なくなるよう、設計・実装の段階で丁寧な作業が必要です。
このように、プログラミング工程は、設計図を実際の形に起こすものづくりの要所であり、システムの品質と機能性を大きく左右する工程といえるでしょう。
テスト・納品
プログラミング作業が完了した後は、実際の運用に向けた入念なテストフェーズへと移行します。この工程は、システムの品質と安定性を確保するために非常に重要であり、開発全体の信頼性を左右するステップです。
テストは以下のような段階に分かれて実施されます。
1. 単体テスト(約2週間〜1ヶ月)
まず行われるのは、開発した各プログラムが正しく動作するかを検証する「単体テスト」です。このテストでは、個々のモジュールや関数単位で挙動を確認し、バグやロジックの不備を徹底的に洗い出します。この段階での不具合の修正は、後工程に影響を与えるリスクを減らすためにも極めて重要です。
2. 結合テスト(約2週間)
次に実施されるのが、複数のプログラムを連携させた際の動作確認を行う「結合テスト」です。単体では正常に動いていた処理が、モジュール同士の連携により不具合を起こすケースもあるため、ここでの検証によりシステム全体の統合性が担保されます。
3. システムテスト(約1週間)
結合テストが完了すると、実際の運用環境に近い形で行う「システムテスト」に移ります。このフェーズでは、エンドユーザーの利用シーンを想定し、操作性・レスポンス・機能の整合性などをチェック。使い勝手やUIの最終確認もこの段階で行われるため、ユーザー体験の向上に直結する重要な工程です。
4. 運用テスト(約1週間)
最後のテスト工程は、本番環境での運用に耐えうるかを実際に検証する「運用テスト」です。クライアントの実業務に沿ってシミュレーションを行い、導入後に想定される問題がないかを最終確認します。この段階では、セキュリティやデータ連携、エラー処理なども詳細にチェックされ、万全な状態で納品へと進められます。
これらのテストをすべてクリアした後、晴れてシステムはクライアントに納品されます。納品後も、必要に応じて微調整やバグ修正が行われることもあり、保守・運用フェーズへと自然に移行していきます。
高品質なシステムを構築するためには、この「テスト・納品」工程での慎重な対応が欠かせません。開発スケジュールに余裕を持ち、各フェーズに適切な期間を確保することが成功のカギとなります。
システム開発は、プロジェクトの規模や仕様、採用する開発手法、そしてクライアントと開発会社の連携状況によって、かかる期間が大きく変動します。一般的に、小規模なシステムでは1〜2ヶ月、中規模で3〜4ヶ月、大規模になれば半年以上を要することも珍しくありません。
特に重要なのは、要件定義やテストといったクライアント側の判断が求められる工程で、適切な準備と合意形成ができているかどうか。開発期間を見誤らないためにも、工程ごとの所要時間の把握と事前準備が不可欠です。
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