チャットボットの基本概念と仕組み
チャットボットは、チャット(Chat)とボット(bot)を組み合わせた言葉であり、ロボットを使用したような自動的に応答する会話プログラムのことです。
従来では、ヘルプデスクの担当者などがチャットで問い合わせ対応をしていましたが、チャットボットを使用して応答を自動化することにより、担当者の工数を削減できる点が特徴です。
基本的なチャットボットの仕組みは、ある程度のシナリオを用意のうえプログラムとして組み込むことで、自動返信が可能となっています。なお、この仕組みは登録した質疑応答にしか使用できない点に注意しましょう。
AI型とルールベース型の違い
チャットボットには、大きく分けてAI搭載型とルールベース型の2種類があります。AI搭載型は機械学習により回答の精度を高めていくタイプで、実現には膨大な量のデータが求められますが、対応できる範囲が広く自然な会話を成立させやすいです。ただし、導入と学習にコストがかかる点に注意しなければなりません。
一方、ルールベース型は事前に登録している内容をもとに回答するタイプです。例えば、社内で多い質問の回答を事前に登録することにより、従業員から問い合わせがあった際に指定の文言を提示できます。しかし、登録した内容以外の返答が難しいことから、融通が利かず不自然な会話になりやすい点がデメリットです。
24時間365日対応で顧客満足度が向上
チャットボットを導入することにより、人の手を介さず問い合わせ対応が可能です。24時間365日、業務時間外に問い合わせがあったとしても回答できるため、顧客満足度を高めやすいです。
人件費削減と業務効率化
今まで問い合わせ対応に人員と時間を割いていた場合、チャットボットの活用により業務を自動化できます。そのため、人件費の削減や業務の効率化を実現しやすく、担当者は他の業務へリソースを注げるでしょう。
マーケティング活用とデータ収集
チャットボットの活用で問い合わせ業務効率が向上すれば、今までよりも多くの対応が可能となります。例えば、今まで1日に100人の対応をしていたところが、チャットボットにより1日10,000人の対応が可能となれば、ユーザーに関する膨大な量の情報を蓄積できるのです。
ユーザーが抱えている課題や行動を可視化できることで、顧客満足度やCVの向上に繋がりやすいでしょう。
ステップ1:導入目的を明確にする
まずは、チャットボットの導入目的を明確にします。目的を明確にせず導入すると抱えていた課題を解決できなかったり、高額な費用だけかかったりと失敗する可能性があるためです。
そのためには、チャットボット導入によって得られる効果を把握して、何を実現したいか洗い出してください。
例えば、問い合わせ対応の自動化による業務効率の向上、迅速な対応による顧客満足度の向上などが挙げられ、その目的に応じてチャットボットの種類や活用法は細かく変わってくるのです。
ステップ2:必要な機能を洗い出す
目的を明確にした後は、チャットボットに必要な機能を洗い出します。例えば、顧客からの問い合わせが非常に多い場合は、内容を選択してもらうFAQ対応の機能が必要で、ルールベース型のチャットボットで対応可能です。
その一方で、顧客の問い合わせが自由入力となっており、内容に応じて柔軟に返答したいときはAI搭載型が必要になるでしょう。他にも、顧客満足度向上のためにLINEと連携できる機能や、予約管理などの機能も求められます。
ステップ3:設置場所と運用体制の検討
導入するチャットボットの機能を明確にした後は、設置する場所を決めます。例えば、Webサイト・LINE・自社アプリなど、目的に応じて設置場所は変わります。一般的には、WebサイトのFAQページや商品・サービスの紹介ページなどに設置するケースが多いです。
また、既存システムとの連携を検討するなど、設置場所に応じた運用体制も考える必要があります。
ステップ4:ツール・ベンダーの比較検討
チャットボットのサービスは多種多様ですが、目的・機能・設置場所が明確になれば、ある程度の種類を絞り込めます。これらの条件に合致したツール・ベンダーをピックアップして、いくつかのポイントを比較し検討しましょう。
なお、チャットボットのツールを比較する際のポイントには、実績・費用・カスタマイズ性・サポート体制などが挙げられます。これらを比べて自社に最適なものを選ぶと、失敗に陥るケースは少ないでしょう。
ステップ5:無料トライアルやヒアリングを活用
良いツールと感じていても、実際に使ってみると期待を下回ってしまうケースは珍しくありません。そのため、最終候補までツール・ベンダーを絞り込んだ後は、無料トライアル・デモを実施して操作感などを確認してください。
実際に問い合わせ対応をしている担当者に使ってもらい、良い点・悪い点をヒアリングすることで最適なものを選びやすくなる、かつ導入後の体制を構築しやすくなります。
ステップ6:シナリオ構築とテスト導入
ツールが決まった後は、本格導入に向けて準備を進めます。ルールベース型のチャットボットの場合はシナリオを設計する、AI搭載型であれば機械学習が必要となるため、導入する際は準備期間も考慮しておきましょう。
シナリオの設計が完了した後はテスト導入を開始し、小規模でスタートして様子をみると失敗が起こりにくいです。
ステップ7:本格導入と運用・改善体制の構築
チャットボットのテスト導入が完了した後は、本番環境へ反映して実際に運用します。ただし、導入して完了ではなく、その後も実際に稼働しながら改善点の有無を確認しながら精度を高めていきましょう。
定期的に担当者へ使用感や課題をヒアリングして、PDCAサイクルを回すことで最適な運用体制へ近づけます。
初期費用の目安
チャットボットは導入時に構築・開発やシナリオの設定などによる初期費用が発生し、金額は種類によって異なります。
例えば、ルールベース型のチャットボットの場合、簡易的なもので自社にて設計・開発をすると費用がかからないことがあります。仮に、設定・構築に時間と手間がかかるケースでも、相場は10万円前後です。
その点、AI搭載型のチャットボットは開発に高い技術が必要で、かつ複雑な設定も求められるため、初期費用の相場は50万円から300万円ほどとなります。他にも、自社に合わせたカスタマイズ開発を伴う場合は、500万円以上するケースも考えられます。
月額コスト(ランニング費用)
チャットボットのランニングコストには、ライセンス費・運用支援費・AIトレーニング費用などがあります。なお、ルールベース型のチャットボットで月額5,000円から5万円ほど、AI搭載型で月額10万円から50万円ほどです。
チャットボットを導入する際は、自社の業種・業務内容・顧客接点の種類に応じて最適なベンダーを選ぶことが重要です。
ここからは、業界特化型から汎用型まで、チャットボット導入で定評のある企業を紹介します。なお、選定の際は「対応業種」「機能範囲」「システム連携力」などに注目しましょう。
株式会社Wanderlust:ECサイトに特化したチャットボット開発が強み
株式会社WanderlustはAI技術を活用して、さまざまなサポートを提供している企業です。特に、ECサイトに特化したチャットボットの開発に強みがあり、FAQ対応・レコメンド機能まで幅広く対応しています。ShopifyなどのEC基盤との連携実績も豊富なため、D2C事業者におすすめです。
会社名
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株式会社Wanderlust
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サービス名
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Orca
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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ECサイトに特化したチャットボットの開発
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マーティー・ソリューションズ株式会社:高い顧客満足度
マーティー・ソリューションズ株式会社は、対話インターフェースのAI型チャットボット「HolaBot」を提供しています。問い合わせに対して自動で24時間365日対応するため、顧客満足度の向上に貢献してくれるでしょう。
なお、HolaBotはMicrosoft TeamsやSlackなどと連携できるため、変わらぬ操作性を維持しつつ利用できます。
会社名
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マーティー・ソリューションズ株式会社
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サービス名
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・ITソリューション
・ソフトウェア開発
・クラウドの導入や運用支援
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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AI型チャットボットの提供
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株式会社Automagica:予約・スケジューリング系のチャットボットに特化
株式会社Automagicaは、生成AIを活用した業務自動化やアプリ・システム開発を主要事業としています。顧客対応チャットボットなども扱っており、特に予約・スケジューリング機能に強みがあります。クリニック・美容室・人材派遣など、予約業務が多い業界の実績が豊富です。
会社名
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株式会社Automagica
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サービス名
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カリスマAI
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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予約・スケジューリングの効率化
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百易ソフト東京株式会社:多言語対応・海外展開を視野に入れた導入に最適
百易ソフト東京株式会社は最新のDX技術やクラウド技術を駆使し、クライアントの課題を解決しています。チャットボットは多言語に対応しているため、海外展開を視野に入れた導入に最適です。
会社名
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百易ソフト東京株式会社
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サービス名
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RPA・AIサービス
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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中国語・英語など多言語対応
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ナイル株式会社:マーケティング連携に強いチャットボット開発会社
ナイル株式会社はSEO・広告と連携したマーケティング分野に強みがあり、AI技術をはじめとするDX推進の支援も実施しています。ChatGPTや生成AIの活用だけでなく、チャットで取得したデータをMAツールなどに連携できるため、統合的な活用にも対応している点が特徴です。
会社名
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ナイル株式会社
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サービス名
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DX&マーケティング
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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ChatGPTや生成AIの活用
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デトモ株式会社:人材業界向けチャットソリューションの専門企業
デトモ株式会社は、主にシステム開発やITコンサルティングのサービスを提供しています。その中でも人材業界向けチャットソリューションを扱っており、求職者対応の自動化やキャリア相談の一次ヒアリングなどを効率化することが可能です。
会社名
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デトモ株式会社
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サービス名
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システム開発支援
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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求職者対応の自動化
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株式会社shintech:製造・インフラ業界の技術的問い合わせ対応に強い
株式会社shintechはDXを一気通貫で支援しており、AI・RPAを活用する支援が得意でチャットボットにも対応しています。複雑な製品仕様に対応する高度なシナリオの設計も可能で、社内マニュアルなどの連携やナレッジ共有にも対応している点が特徴です。
会社名
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株式会社shintech
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サービス名
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AI / RPA活用による業務効率化、業務システム構築
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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複雑な製品仕様に対応する高度なシナリオ設計
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株式会社ネッコス:飲食・小売業界向けチャットボットを展開
株式会社ネッコスはLINE API開発に強く、実績が豊富にあります。集客支援や運用コンサルなどのサポートを行っており、店舗スタッフの教育や運用支援をチャットで代替しています。
会社名
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株式会社ネッコス
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サービス名
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LINEアプリ開発
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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LINEをはじめとするサービスによる顧客満足度向上
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株式会社Kerberos:不動産業向けに特化したチャットボット提供企業
株式会社Kerberosは、ソフトウェア開発やAI研究開発を行う企業です。LINEのEC・CRMツールである「CHATY」を活用することで、簡単にショップを開設できます。また、内見予約・資料請求などの定型業務を自動化できるなど、不動産特有の設計にも適しています。
会社名
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株式会社Kerberos
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サービス名
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CHATY、受託開発、ECシステム構築、マーケティングコンサルティング
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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LINE上に無料で簡単なショップを開設できる
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株式会社SUPER STUDIO:ブランド体験を重視する企業におすすめ
株式会社SUPER STUDIOはECプラットフォームの「ecforce」を活用して、クライアントのニーズ解決に向けたサポートを提供しています。また、D2Cブランド向けにサイトや企業のイメージを壊さない、自然なUXデザインのチャットボットも提供する点が特徴です。
会社名
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株式会社SUPER STUDIO
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サービス名
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ecforce、D2C
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費用
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要問い合わせ
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おすすめポイント
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販売から管理まで行う販売モデルを展開
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目的を明確にしない導入は失敗の元
チャットボット導入の目的が曖昧ではツール選定の軸が定まらないため、良さそうなツールを導入しても稼働してから必要な機能がなく、結果的に後悔する可能性があります。そのため、最初の段階で目的を明確にすることは、最重要であると認識しておきましょう。
適切なシナリオ設計が必要
ルールベース型のチャットボットは、適切なシナリオを設計しなければ顧客満足度は向上しません。ユーザー目線で設計しなければ、かえって離脱を招く可能性が考えられます。
ユーザーが問い合わせる目的の多くは、疑問や課題の解消です。そのため、シナリオの設計がユーザーの目的を達成できるよう、入念にチェックしましょう。
導入後の運用・改善体制を確保する
チャットボットは導入すれば完了ではなく、定期的なメンテナンスが必要です。問い合わせで得たデータを分析して適切な回答を追加・更新するなど、改善体制を確保しましょう。
有人対応との連携を考慮する
回答精度が高いチャットボットを導入しても限界があるため、すべての問い合わせを自動化するのではなく、有人対応との連携を考える必要があります。解決策としては、事前に有人対応への導線を計画しておくことで、有事の際でもスムーズに対応できるでしょう。
ユーザーに選択式で複数の質問に回答してもらい、それでも解決しない場合は有人対応となるケースが一般的です。しかし、ユーザーの回答回数が多いと顧客満足度は低下してしまいます。
その一方、短いステップで有人対応へ切り替えていては業務効率化に繋がらないため、問い合わせ内容に応じてチャットボット・有人対応のバランスを考えましょう。
定期的なシナリオ見直しと改善
シナリオを定期的に見直し改善することで、より顧客満足度を高めやすくなります。チャットボットを長く活用することでユーザー行動などのデータが蓄積され、活用されやすくなるのです。
なお、タイミングによって問い合わせの傾向は異なるため、導入当初から何も変更せずにいると、ユーザーが満足する回答を提供できない可能性がある点には注意してください。
チャットボットの費用相場は?
チャットボットの費用相場は種類によって異なりますが、初期費用は数万円から数十万円、月額は1万円から5万円が一般的です。ルールベース型のチャットボットの場合、初期票は数万円前後、自社で設計すれば費用がかからないことがあります。開発に工数がかかるAI搭載型は50万円が相場ですが、内容によっては数百万円ほどかかります。
チャットボット導入の流れを教えてください
チャットボットを導入する際は目的の明確化、ツール選定、シナリオ作成、設置・運用の流れで進めます。利用目的により最適なチャットボットの種類が異なるため、初期段階で妥協しないよう注意が必要です。
他社ではどれくらい導入されていますか?
調査会社のインゲージが実施したレポートでは国内企業の30%以上が、何らかのチャットボットを導入しています。最も多い業界は金融・保険業の36%であり、社外向けだけでなく社内向けに活用する企業も少なくありません。
どんな効果が期待できますか?
24時間365日対応できるため顧客満足度が向上したり、業務の自動化による人件費を削減できたりします。また、チャットボットをデータ収集やマーケティングに活用することで、CVR改善にも繋がります。
チャットボットを導入することで、業務の効率化や顧客満足度の向上など、さまざまな効果を実感できます。その効果を最大限に発揮するためにも、正しい導入手順と運用方法を把握しておきましょう。
まずは、チャットボットを導入する目的を明確にして、自社に合ったツールやパートナーを選ぶことが大切です。